寿司は戦争
いきなりだがこれを見てほしい。
これは、私が前に回転寿司を訪れたときに食べたもののメモだ。
今を輝く高校生が食うにはアンキモが渋すぎるくらいで、特に変わったことはない寿司ネタと思うかもしれない。しかし私が見てほしいのはこの内容ではない。
私は、このメモを、「入店前」に書いたのだ。
回転寿司。
それは、ときに協力し、ときに騙し合い、レーンという名の神によるデウス・エクス・マキナが起こる場。
隣の客と同じものを食うのが何となく癪だ。同じネタを複数回食うのはあり得ない。これはタレで食え。これは生姜で。100円皿にしろ。これはネタが乾いている。これは盛りつけが悪い……
寿司の奪い合い。積み上がる皿の陣形。飛び交う怒号。上がるときの声。
それはさながら――いや、まるっきり戦争である。
そんな戦乱の世を生き抜くためには、人間は狡猾にならなければならない。
だから私は、回転寿司に入るときはいつも「計画」をたてる。上記のメモはその一例だ。
私の戦争は、入店直後、もっと言えばそのはるか前から始まる。
今日はスッキリと鯛で締めよう。であれば、そのひとつ前は大味のもを食べたい。サーモンはどうだろう。いや、マグロをしっかりといただくのが良いかもしれない。そうだマグロだ、寿司の王様、マグロをいただくのだ。ならばその直前にアンキモを挟み込むテクニカル・スタイルはどうだろう。アンキモを美味しくいただくためには、その前にサッパリとした味がほしい。ハマチなんかが最適だ。ではハマチに繋げるため、そして同時にエンジンをかけるために初っぱなにビントロを置くのが名案かもしれない。
そんな風にして「計画」を組む。
ちなみに私は回転寿司でめちゃめちゃガリを食うのだが、ガリを食べるタイミングも最初から計画に入れている。
万全の計画を胸に入店。
落ち着け。緊張するな。私にはこの「計画」があるじゃないか。何も恐れることはない。この「計画」を冷静に、無感情に、淡々と進めればいいだけ。
高鳴る心臓を必至に抑える。
レーンに向かい合うその姿はさながらプロの暗殺者。吐息は鋭いピアノ線のようであり、眼光は研いだばかりの日本刀のごとく慧敏。
そっと目を上げ、注文パネルを睨む。
先ず、ビントロ――
前頭葉から刺激が伝わる。それは三角筋、広背筋、上腕二頭筋などあらゆる筋肉に正確に作用し、ゆっくりと腕がもちあがる。
そして
私は
嗚呼、私は
気づいてしまう。
本日のオススメ
ホタテ貝柱
おのれ諸葛孔明ィィィィイイイイ!!!!
こんなッ……!こんな非人道的な行いが許されるかッ……!?否!!許されて良いはずがない!!
死ね!!いやごめん「死ね」って言うのは良くないね。ちょっと苦しめ!!!!
ああわかっているとも。これは罠だ。
私の完璧でひとつの綻びもない美しい計画を狂わせようとする、醜い罠……!
ホタテの注文ボタンポチー(*・・)σ
この程度の罠にかかるわけにはいかないッ……!クッ殺せ……!ホタテ貝柱に屈するくらいなら死んだ方がマシだ……!!
はやく来ないかなー(*´ω`*)
嫌だ!ホタテ貝柱なんて食べたくない!私は……私はこの戦争を、ビントロから始めると心に決めたのだ!!
その誓いをやぶるわけには
キターーーーーー(゜▽゜*)
やぶるわけにはいかな
ッシャwwイタダキマスwwww o(^o^)o
ムシャ…… (..)
…… (..)
………… (..)
……………………………… (..)
(゚Д゚)ウマー
ここ、石川県はお魚が美味しいところです。
ぜひ一度いらっしゃってください。